(第1回から続き)
シショー(師匠)、天才、社長……。
これらはAさんに教えてもらった、全国の広報マンの二つ名である。一般には知られていないが、自治体広報マンは横のつながりが強く、中には漫画のような二つ名で呼ばれる人もいるのだという。
「師匠」や「天才」の呼び名は、決して大袈裟ではない。彼らは市販の雑誌と互角……いや、それ以上の紙面をつくりあげているのだ。しかも、文章はもちろん、写真から紙面デザインに至るまで、すべて自前で。公務員でありながら、並の編集者よりはるかに優れたスキルを持っている。
全国の優秀な広報媒体が一堂に会して競うコンクール「全国広報コンクール」の存在も、Aさんに教えてもらった。入選する広報紙は、総じてレベルが高い。中には、上位入選の「常連」広報紙もある。例えば、福智町の『広報ふくち』。表紙からして、ただならぬ雰囲気が漂っている。
彼らのつくる紙面からは、自分達の街への愛情を感じる。
……そう、愛情なのだ。私が出会った広報マン達は、みんな自分の住む街を愛している。よいところを少しでも住民に伝えようとしている。だから、精神的にも体力的にも予算的にも厳しいだろうに、夢中になって広報紙をつくる。子どもの頃から引っ越しが多く、地元愛と無縁だった私には、彼らが眩しかった。
「この人達を主役にした小説を書きたい」
そう思うようになったのは、当然の成り行きだった。
(第3回に続く)
天祢 涼(あまね りょう)