「少女が主人公の小説を書くことが多いですよね」とよく言われるミステリ作家・天祢涼です。そんなことはないだろう、と振り返ってみると、10代の女性主人公は美夜シリーズの音宮美夜だけでした。『謎解き広報課』も『探偵ファミリーズ』も主人公は成人してるし、『ハルカな花』の主人公は少女と言えば少女だけど(以下略)。
でも『希望が死んだ夜に』の主人公・冬野ネガは14歳。正真正銘の「少女」。これまで自分が書いた小説の中で最年少のヒロインです。
希望の「希」という漢字が「ねが(う)」と読むことから名づけられた、ネガ。現在は、母親の映子と川崎市登戸のボロアパートに暮らしている。母はあまり働かなくなり、生活保護も断られた。まわりに頼れる大人や友人がいないネガだったが、あるとき、運命的な出会いをした……。
(帯の裏に書かれたあらすじより抜粋)
上記からお察しのとおり、見た目はヤンキー・でも育ちはお嬢さまな音宮美夜とはまったく境遇が異なりますが。
『希望が死んだ夜に』のネガは、あくまで普通の中学生。特殊能力は一切ありません。その意味では、これまで上梓した小説と雰囲気が異なるかもしれません。
果たしてネガは、どんな出会いをしたのか。なぜ同級生・春日井のぞみ殺害で逮捕されることになったのか。決して語らない動機はなんなのか。お読みいただければ幸いですm(_ _)m
なお、本作は、ネガの動機を追う刑事の話でもあります。
神奈川県警刑事部捜査一課の真壁巧は、ある事情から、なんとしてもネガの動機を突きとめなくてはならない。そのためには手段を選ばない男です。しかし共に捜査する仲田蛍は子どものことを第一に考える女性という、水と油のコンビ。早急に事件解決を目指す真壁と、決して一枚岩ではありません。
この二人は書いてて楽しかったなあ。機会があれば、また書きたい。
『希望が死んだ夜に』は文藝春秋から9月13日ころ発売です。
神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生の冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたものの、「あんたたちにはわかんない」と動機は全く語らない。なぜ、美少女ののぞみは殺されたのか。二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がってくる。
「キョウカンカク」でメフィスト賞を受賞し、『葬式組曲』が本格ミステリ大賞候補や日本推理作家協会賞(短編部門)候補となった著者による、社会派青春ミステリ。
文藝春秋のサイトより