登場人物の名前を考えるのは好きだけど、書いているうちに「イメージが違う」と変えることも多いミステリ作家・天祢涼です。連載時のヒロインの名前を、本にするときタイトルに合わせて変えたことすらあります(文庫化されたら戻す予定)。
でも『希望が死んだ夜に』の主要登場人物の名前は、ほぼ初期の設定どおりでした。
同級生殺害容疑で逮捕される主人公・冬野ネガは「希望」の「希」が「ねがう」とも読むことから付けられた名前。被害者の春日井のぞみも、「希望」という単語をイメージさせる名前ということで、これも最初から決定。少女二人の名前を対にすることで『希望が死んだ夜に』のタイトルに深みを与えられるはず……だったのですが。
「のぞみ」に関しては、途中まで「希望」と書いて「のぞみ」と読ませる設定でした。昔、『なかよし』でやってた少女漫画のヒロインがそういう名前だったんですよ。男女交際禁止の学校で、男の子とつき合ってるのを内緒にしている女の子の話です(いま思うとリア充だな・笑)。好きな漫画だったのですが、作品の名前を忘れてしまいました。情報求む! あのころの『なかよし』は割と読んでいて……って閑話休題。
第一章が終わるまで「春日井希望」だったのですが、タイトルが『希望が死んだ夜に』なので、「希望」という字がすぐには「のぞみ」と読めない。「希」で「のぞみ」にしようかとも思ったのですが、自分の中で某女優さんのイメージが強すぎてうまく書けない。
散々悩んだのですが、結局、第二章を書き始める前に「のぞみ」とひらがなにしました。
名前がひらがなだと、文章によってはひらがなばかり続くので抵抗があったんですけどね。例えば「のぞみがあたしにこんなことを言った」より、「希望があたしにこんなことを言った」の方が視認性が高くありません?
でも「ひらがなが続かないように文章を変えればいい」と工夫することにしてから、書きやすくなりました。縦書きだと、ひらがなが続いても心配していたほど読みにくくありませんし。これまでにない発見で、テンションを上げながら執筆できました。小説道は奥が深いなあ。
のぞみ殺害容疑で逮捕されたネガ。犯行は認めたのに、なぜ動機は語らないのか。二人の間になにがあったのか。お読みいただければ幸いですm(_ _)m
『希望が死んだ夜に』は文藝春秋より9月13日ころ発売。早いところでは既に店頭に並んでいるようです。
神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生の冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。少女は犯行を認めたものの、「あんたたちにはわかんない」と動機は全く語らない。なぜ、美少女ののぞみは殺されたのか。二人の刑事が捜査を開始すると、意外な事実が浮かび上がってくる。
「キョウカンカク」でメフィスト賞を受賞し、『葬式組曲』が本格ミステリ大賞候補や日本推理作家協会賞(短編部門)候補となった著者による、社会派青春ミステリ。 (文藝春秋のサイトより)