カバー写真:青山裕企
カバーデザイン:関口聖司
発売日:2020年5月22日
定価:1650円(税別)
出版社:文藝春秋
椎名きさらは小学五年生。母子家庭で窮乏している上に親から〈水責めの刑〉で厳しく躾けられていた。ある時、保健室の遊馬先生や転校生の翔太らに指摘され、自分が虐待されているのではないかと気づき始める……。
文藝春秋の公式サイトより
一方、JR川崎駅近くの路上で、大手風俗店のオーナー・遠山が刺し殺された。県警本部捜査一課の真壁は所轄の捜査員・宝生と組んで聞き込みに当たり、かつて遠山の店で働いていた椎名綺羅に疑念を抱く。だが事件当夜、彼女は娘のきさらと一緒に自宅にいたというアリバイがあった。真壁は生活安全課に所属しながら数々の事件を解決に導いた女性捜査員・仲田蛍の力を借りて、椎名母娘の実像に迫る。
前作『希望が死んだ夜に』の「こどもの貧困」に続き、「こどもの虐待」をテーマに〈仲田・真壁コンビ〉の活躍を描く社会派と本格が融合した傑作ミステリー。
17作目です。帯がつくとこうなる。
2月に刊行した『境内ではお静かに 七夕祭りの事件帖』がお気楽(でもないけど)な神社ラブコメミステリーだった反動のようにシリアス……と言いたいところですが、実は第一稿を書き上げたのはこちらの方が先です。修正に時間がかかったことや、刊行スケジュールの関係もあり、先に『境内~』が発売になりました。
2018年初頭、『希望が死んだ夜に』が高い評価をいただいたものの、それが極々一部の方にとどまっていた状況を踏まえ、「同系統の小説を出したい」と思ったことが執筆のきっかけ。もちろん、『希望が~』で書き切れなかったテーマや、新たな課題が見つかったという自分自身の内面の問題もあります。
当初構想していた話は、4人の視点人物の群像劇で、女子高生の復讐がテーマでした。その一つに使おうと思っていたアリバイトリックが「これ、メイントリックに使ってもおもしろいんじゃね?」と盛り上がり、群像劇はすべて破棄。現行の『あの子の殺人計画』に生まれ変わりました。
アリバイトリック以外の設定を考えるのに手間取ったし、執筆中に『境内ではお静かに』のシリーズ化が決まる、『希望が死んだ夜に』の文庫化が決まる等々うれしい予定外が起こったので完成まで時間がかかりましたが、よいものが書けたと自負しています。発売前にプルーフを読んでくれた人たちからの評価も高く、早くも書評をいただきました。
販促物もいろいろご用意しています。展開してくださる書店さんを大募集です!
なお、この小説を書いている最中、ずっと通っていたラーメン屋が閉店してしまいました。でも一日も早く脱稿したくて、閉店前に行けなかった……。昔は従業員に怒鳴り散らし、客にも一言も口をきかなかった親方がすっかり丸くなって、味も接客もよい店になっていたのに……。もうあのラーメンが食べられないなんて……。という小説の内容とは一切関係ない思い出も詰まっている本です。