ジョギング中に「お兄さん」と言われて以来、自分の若さに自信を持っているミステリー作家・天祢涼です。
さて、先日、買い物に行ったときのこと。
ガシャン!とすごい音がしたので駆けつけると、小学校低学年くらいの女の子が自転車ごと横に倒れていました。怪我はないようですが、驚いているのか、自力で起き上がろうとはしない。新型コロナのせいでソーシャルディスタンスが叫ばれている昨今ですが、これはそんなことを言っている場合ではない。
「大丈夫?」と駆け寄った天祢涼は、自転車を起こしました。女の子も我に返ったのか、自力で立ち上がる。
「怪我してない?」
「……大丈夫です」
「痛いところは?」
「……大丈夫です」
「よかった。気をつけて帰ってね」
女の子は終始俯きがちで、返事も小声でした。きっと見て見ぬふりをする大人が多い中、颯爽と声をかけてきた天祢涼に緊張していたのでしょう。なにしろ天祢涼は、40歳すぎても「お兄さん」と言われる容姿ですからね。いいことをしたし、「ふふふーん♪」と気分よく家に帰り、鏡を見たところで気づいたのですが。
こんなんで完全防備している男に話しかけられたら当然緊張するわ
「お兄さん」と言われた日は、ここまで防備してなかったんだからね!
もしかして天祢涼はいいことをしたつもりで、単に女の子を怯えさせていただけだったのでしょうか。でもあの場面で、さすがに知らん顔はできなかったしなあ。マスク警察がうるさいから、なにもつけないで外出するのも抵抗があるし。
結論・早く収まれ、コロナ!