作者が描かずにはいられなかったイラスト
オメガ・ケンタウリの六鎗客編以降、ビッグボディの活躍がすさまじい。ギアマスターにゲームから逆輸入された必殺技メイプルリーフクラッチで勝利。それだけでも充分熱かったが、調和の神編(仮)では真っ先に超神と対峙したし、フェニックスとのタッグでマイティハーキュリーズに勝利を収めもした。
王位争奪編でフェニックスにボロ負けしたビッグボディが2勝したことが信じられない。でもそれ以上に信じられないのが、僕がビッグボディの勝利に自分でも驚くほど熱狂したことだ。
振り返ればビッグボディは、完璧なかませ犬だった。王位争奪編では、ラスボスであるフェニックス及びフェニックスチームの強さを引き立てるためだけに登場し、退場していった。当然、子どものころの僕はビッグボディのことなんて好きではなかったし、「情けない」と小ばかにしていた。
30年ほど前の僕は考えもしなかったのだ。自分がキン肉マンやロビンマスクではなく、ビッグボディのような「かませ犬」になることだってありうることに。
悲願の小説家としてデビューするまで、最終選考に残っても己の力不足で受賞作の引き立て役にしかならなかったことがあった。デビュー後も、いちいち書かないが、まあ、いろいろあったし、いまもある。
こんなときの自分は、いいところなくやられるだけの情けない存在……ビッグボディだ。
もちろん、親身になって指摘をくれる担当編集者や売ってくれる営業担当、「おもしろい本だから売ります!」と応援してくれる書店員さんたちから「友情パワー」をもらえることだってある。おかげで、時にはキン肉マンやロビンマスクになることもできている。だから、小説家としてどうにか10年以上やってこられたのだ。
でも、いつもキン肉マンやロビンマスクでいられるわけではない。
自分にはどうしようもない事情で、王位争奪編のビッグボディになってしまうこともある。
それがわかったから、僕はビッグボディを応援してしまうのだ。かませ犬から這い上がり、宿敵だったフェニックスに一目置かれる存在になったビッグボディ。いつ、どこかで誰のかませ犬になるかわからない僕は、君に自分を重ね合わずにはいられない。
同じく、かませ犬扱いだったカナディアンマンが六鎗客に勝てなかったから、なおさら。
バベルの塔で君の活躍が見られそうにないことが、残念でたまらない。