貫井徳郎さんの一大大河小説『邯鄲の島遥かなり』の中巻を入手、読了しました。
時は幕末。女性よりも美しい美貌を持つ男・イチマツ。彼がたくさんの女性と関係を持った結果、神生島にはイチマツの血を引く者が多々住んでいる。彼らには一様に、「イチマツ痣」と呼ばれる痣がある。この痣を持つ「一ノ屋の一族」の面々が織りなす一大巨編。
一ノ屋の一族は、イチマツは傑物ではあるものの、それ以外は割と凡人が多く(稀に天才や超絶美人が現れる)、いわゆる「英雄たちの血湧き肉躍る物語!」ではありません。でも凡人がそれぞれ悩んだり、迷ったり、子どもをだしに金儲けしようとしたり(笑)しながら生きていく様が愛おしい。上巻の段階で既にフルスロットルでしたが、中巻はさらに加速していました。
ベストは第九部「ご落胤騒動始末」。上巻から登場していたある人物の死。その直後に、隠し子と称する美少女が現れる。この子を巡る遺族の反応がそれぞれ味があってよし……と思っていたのですが。
いやー、第十二部「勝ってくるぞと勇ましく」の切なすぎる展開にやられました。第二次世界大戦の影響が神生島にも及ぶ中、胸をつくような青春小説。これを超えるのは難しい。今回のベストだね……と思っていたのですが(2回目)。
第十三部「子供たち」。視点人物は、子どもが好きなのに子宝に恵まれなかった女性。彼女は、自分と同じイチマツ痣を持つ子どもたちを我が子のように思って接しているが……先入観なく読んでほしいので詳細は書きませんが、「読むのが辛いけど読み進めずにはいられない」読書体験をしました。自分にとっては、中巻どころか『邯鄲の島』史上、最大の破壊力を誇る話。上巻所収の第七部「才能の使い道」と呼応するところがあるだけに、余計に響きます。傑作。
完結編となる下巻は今月発売とのこと。こちらも楽しみです!