来週くらいから発売になる天祢涼の新刊『陽だまりに至る病』。コロナ禍で起こった事件を巡る長編ミステリーです。一応、『希望が死んだ夜に』から始まる仲田蛍刑事シリーズの3作目……ではありますが、繋がりが緩いシリーズなので、この小説から読んでもらっても大丈夫です。がっちり繋がってると辻褄が合わないところがあるしな。
さて、ここ最近は新刊が出る度にフリーペーパーをつくってきた天祢涼ですが、今回はなしです。お名前入りサイン本の販売をしてくれる芳林堂書店高田馬場店さんから「なにか特典ありませんか」と言われたので限定ペーパーをつくっていますが、それだけ。今後、なにかつくる予定もありません。
『陽だまりに至る病』に続く新作の執筆で忙しくて時間が取れないのが理由ではありますが、実は割と悩んだ末の決断でもありまして。
そもそも論で天祢涼がフリーペーパーをつくって、どれだけ売上の役に立ってるのかな、と。
念のために明記してきますが、あくまで「天祢涼が」つくった場合です。フリーペーパーをつくっているほかの作家を否定するつもりはまったくありません。それを踏まえた上で、続きを読んでもらいたいのですが。
天祢涼が最初にフリーペーパーをつくったのは、2013年1月、『セシューズ・ハイ 議員探偵・漆原翔太郎』を刊行したとき。当時は版元がフリーペーパーをつくること自体が珍しく、作家自身がつくることに至っては稀だったと記憶しています。だからこそ、多少はデザインがアレでもそれなりに注目してもらえました。
でも、いつの間にかフリーペーパーをつくる作家が増加。しかも、みんな俺よりデザインセンスがいい。それも圧倒的に(^_^;)
そうなると、文字ばっかりでたいして目を引くデザインでもない天祢涼のフリーペーパーが売上につながってるのかな……という疑問が、一年ほど前から浮かんでおりました。
もちろん、楽しみにしてくれている読者さんがいることはわかってます(いるよな? 楽しみにしてくれてる人いるよな!?)。
それでもなお、棚に残っている自分のフリーペーパーを見ると、「売場を占拠して、却ってお店の負担になっているのでは」と思うこともちらほら。「うちは本に封入してシュリンクをかけてますよ」というお店もあるようですが、それは「中身をぱらぱら読んで、おもしろそうだったら買う」という読者さんを遠ざけてしまう=フリーペーパーをつくることで却ってお店に迷惑ということになりかねないのでは……と懸念しております。
というわけで、悩んだ末に『陽だまりに至る病』ではフリーペーパーをつくらないことにしました。完全撤退というわけではないので、「やっぱりつくった方がよさそう」と判断したら、次回作以降つくるかもしれません。つくるの好きだしね(笑)。
そのときは、どうぞよろしくお願い致します。
なお、豆色紙はたくさんつくりました。書店さんで使ってもらえればうれしいですm(_ _)m