天祢涼のデビュー作といえば、『キョウカンカク』。最近、評価いただいている『希望が死んだ夜に』や『境内ではお静かに』とはまったく系統の異なる、音が視える銀髪の女の子が悪い奴をやっつけるラノベ風味のミステリーです。
講談社ノベルス、講談社タイガで4冊刊行した後、残念ながら打ち切られてしまいましたが、ヒロインの音宮美夜は天祢涼を念願の小説家にしてくれた大切なキャラクター。「同人誌で完結させる!」と息巻いて宣言してから約2年。どうなったか?
一言で言えば進んでません。
以下、長々と言い訳。
去年のいまごろは書いていた
美夜シリーズは、同人誌でやる前に「ネット小説で書いてもおもしろいんじゃないか?」と思って執筆を進めていました。
発表の場として考えていたのはカクヨム。カクヨムの表記方法も勉強して、ランキング上位の作品がどういう風に展開しているかを自分なりに研究して、それに沿って書いていたのです。
書き下ろしや短編と違った展開で書くことになり、これはこれでものすごくおもしろかった。
毎朝5時に起きて、美夜シリーズを執筆。朝ご飯を食べてからいただいている仕事をする……という生活を春くらいまでは続けていました。その甲斐あって、中編全6話構想の1話目は無事に完結。あとは発表するだけ、という段階になっています。
が、ご存じのとおり発表はしていません。2話目以降のプロットもほぼできているにもかかわらず、です。
2話目以降を書く目処が立っていない
「プロットができてるなら書けばいいじゃん」という意見もあるでしょう。はい、ごもっとも。が、いかんせん、書く時間がない。
正確に言えば、あることはあるのですが、締め切りをいただいている仕事にそれを回さないと、とても終わらない。
『希望が死んだ夜に』『境内ではお静かに』が高い評価をいただいたおかげで、仕事が増えました。これはとてもありがたいこと。「貴様の本は我が社に大損害を出したが、もう一度だけチャンスをくれてやろう」という声もいただきましたしね。※そんな上から目線な言われ方はされていません。
というわけで、思いのほか忙しくなってしまい同人活動をしている時間がなくなってしまいました……と書くと「俺って忙しいぜ」自慢に聞こえるかもしれないけれど、書くのが遅いから余裕がないだけで、平均的な執筆速度の作家なら充分対応できる仕事量だとは思います(^_^;)
この状況では、1話目だけ発表しても後が続かず宙ぶらりんになるだけ。それは避けたい。
「なら、いただいている仕事が終われば美夜シリーズに戻れるか?」と問われると、それはそれで新たな問題が。
原因は『境内ではお静かに』のヒロインにあります。
雫の登場で「年下の音宮美夜」は書けなくなった
美夜シリーズは、『キョウカンカク』をメフィスト賞に送った時点ではシリーズ化の構想はまったくありませんでした。それが急遽2作目を書くことになり、美夜のバックボーンがなにもわからないまま執筆することに。結果、自分の中で迷走してしまったのはどこかに書いたとおり。
そこで、ちゃんと美夜の過去を考えなくては……と思って書いたのが講談社タイガのシリーズ。過去話なのでノベルス版の「強いお姉さん」の美夜とは敢えて差をつけて、「年下の女の子が健気にがんばる話」をコンセプトにしました。
が、そういう女の子の路線は『境内ではお静かに』のヒロイン・久遠雫を書いたことで満足しちゃったんですよね。
タイガ版の一路・美夜の関係って、『境内』の壮馬・雫の関係と似ているんですよね。実際、『境内』を読んでくれた友人からも「そっくりすぎない?」と感想をもらいました。
『境内』は一作目の途中から「シリーズでやりたい」と必死になり、雫のバックボーンはいろいろ考えて書いたし、壮馬との関係をどうしたいかという構想もある。おまけに読んでくれた人の評判もいい。そうなると、「年下の女の子が健気にがんばる話」のアイデアは、どうしても美夜ではなく、雫の方に投入してしまいます。
結果、講談社タイガ路線の音宮美夜を書くモチベーションがなくなってしまいました。
「なら、『境内』が終わったら美夜シリーズに戻れるか?」と問われると、それもまた新たな問題が。
書きたいものが変わってくる病が発症
美夜を「年上の強いお姉さん」にするにせよ、「年下の健気な女の子」にするにせよ、そもそも同人誌版でやろうと思っていたミステリーを書く気がなくなってしまいました。これが現状、最大の問題点。
天祢涼は割と移り気なので(笑)、その時々によって書きたいと思っているものが変わってきます。だから作風がころころ変わってしまい、「これじゃいかん」と「自分が本当に書きたいものはなにか」と悩みに悩み抜いて見定めた路線が、最近の「現代社会を扱ったミステリー」「ラブコメミステリー」の二路線。
これとは別に美夜のシリーズも書きたかったのですが、商業でやるのは難しいので同人活動で……と思っていました。
が、上記二路線を書いているうちに、美夜でやりたかったミステリーの傾向が変わってしまったのです。具体的にどう変わったのかは書けません。もったいつけているわけではなく、また書きたいことが変わってしまいそうだからです。
ただ、言えるのは、「美夜の過去についてはいろいろ考えたので、もう充分。講談社ノベルス版の『強気なお姉さん』の美夜に戻して、あの後の話を書きたい」ということ。もっとも移り気なので、この基本方針すら数ヵ月後には変わっているかもしれないけどね(苦笑)。
理想は「2年くらい同人活動で美夜だけを書いて暮らす」。これなら書きたいものが変わる前に完結させることができます。ただ、あまりに現実的ではない。いただいているお仕事がたくさんあるし、こっちはこっちで楽しいですからね。
とりあえず保留しつつ、ネタ出し中
というわけで、現状の美夜シリーズは「完全保留」。ただ、ネタだけは考えていて、Appleのメモアプリにちょこちょこ書いてはいます。
あくまで「保留」であって、ちゃんと完結させる気持ちはあります。音宮美夜は、自分を小説家にしてくれた大切なキャラクター。ちゃんと終わらせてやりたいといまも思っているのです。
密かに、2年くらい仕事をしなくて済むくらい小説を書き溜めることができないかと画策していたりもします。それがいつの日になるかわかりませんが、音宮美夜は、自分を小説家にしてくれた大切なキャラクター。ちゃんと終わらせてやりたいといまも思っているのです(大事なことなので二度書いた)。
こんな感じで、美夜シリーズを待っている人に「お待ちください」とはとても言えない状況なのですが、一切言及しないのも申し訳ないので、現状を書いてみました。長い上にまとまりがなくなったので、この辺でm(_ _)m