仕事以外のことで慌ただしくて、ゴールデンウィークは一日も休めなかった天祢涼です。落ち着いたら世間様に周回遅れでまとめて休む予定。
さて、5月16日ころ『都知事探偵・漆原翔太郎 セシューズ・ハイ』の文庫版が発売になります。単行本版が出たのが2014年9月ですから、3年弱での文庫化です。これも皆様の応援のおかげ。感謝しておりますm(_ _)m
でも『都知事探偵』は、無計画で書き始めた小説でした。
だって続編があるなんて知らなかったんですもの
再三書いているとおり、『議員探偵・漆原翔太郎』は「メフィスト」に寄稿した短編を当時の担当さんが気に入って、そのまま続きを執筆することになったのが世に出たきっかけ。連作短編としてきれいにまとめて、主人公の漆原翔太郎の物語にも決着をつけました。
そう、あのラストを書いた時点では、天祢涼には続きを書くつもりなど毛頭なかったのです。
だから「評判がいいので続きを書いてください」と続編の執筆依頼が来たときは「は?」と声を上げてしまいました。はっきり言って、続編の構想などない。いやー、困りましたね。デビュー作の『キョウカンカク』も続編の予定がなかったのにいきなりシリーズ化が決まって、散々悩んだ末に文庫版でシリーズの伏線を張るべく全面改稿に至ったわけですが、その再来も覚悟しました。
でも『議員探偵』は、続きを書く気がなかったくせに「続きがあってもおかしくない終わり方」をさせておいたことが幸いしました。劇中で翔太郎が口にした台詞を膨らませて新たな設定を追加し、どうにか続編の執筆に着手できたのです。
びっくりするほど評判がよかった!
ここまで無計画だと、『都知事探偵』はおもしろくないのでは? と思う人もいるかもしれません。実際、書いてる本人も「これはおもしろくなるのか?」と不安でした。さらに急いで考えたために、1話と3話のトリックが被ってしまったので3話を変更、そうしたら今度は新3話と4話のトリックが被ってしまって4話を変更……と執筆中は迷走しまくり。
でも書き上がった『都知事探偵』は、自分でもびっくりするくらい面白くなりました。
ただの自己満足ではありません。2014年の「本格ミステリ・ベスト10」12位、「黄金の本格ミステリー」選出と、ちゃんと評価もいただいています。この本がきっかけで、応援してくださる書店員さんと出会うこともできました。
終わってみれば、自他ともに認める傑作に仕上がりました。
クオリティーは『議員探偵』より高いです。お楽しみに!
文庫化に当たって、『議員探偵』『都知事探偵』と立て続けにゲラを読んだのですが、後者の方が圧倒的にクオリティーが高いです。天祢涼は記憶力が腐っているので自分が書いた伏線やトリックを忘れて読み返したのですが、『都知事探偵』はきれいに騙されました。読後、誰かにオススメしたくなった(笑)。
もちろん、『議員探偵』を読んでいた方が楽しめるのは間違いありませんが、『都知事探偵』単体でも楽しめるつくりになっています。興味を持った方はお読みいただけるとうれしい。よろしくお願いします!
by 天祢涼